「会計ソフトを変更すると過去のデータは消えてしまうのではないか」「税理士を変えると過去のデータが消えてしまうのではないか」「移行作業が膨大で本業に支障が出るのではないか」という不安は、適切な手順を知ることで解消できます。
会計ソフト変更の最適なタイミングと進め方
理想的なのは、決算申告が完了した直後のタイミングです。新しい年度の期首からクラウド会計をスタートさせるのが最もクリーンです。 しかし、クラウド会計の場合、期中(年度の途中)であっても、特定の月からデータを切り替える手法が確立されていますので、仕訳データの移行が可能です。「これ以上アナログなやり方を続けたくない」と感じた時が、最大のチャンスです。
Step 1: 勘定科目のマッピング
既存ソフトの科目を、freeeやマネーフォワード(MF)の体系に合わせる作業です。
- 課題: 従来のソフトは「1対1」の仕訳(借方・貸方)を重視しますが、クラウド会計(特にfreee)は「タグ」という概念を併用します。
- 対策: 移行前に、現在使用している「補助科目」を、クラウド上の「品目タグ」や「部門タグ」のどちらに振り分けるかを定義します。ここを適当にすると、移行後の試算表が以前のものと比較できなくなります。
freeeもマネーフォワードもマッピングの機能は非常に充実しているので、画面指示をみながら作業を進めることが可能です。
Step 2: 固定資産台帳の登録
減価償却費の計算を途切れさせないための重要な工程です。
- 課題: 会計データだけを移しても、固定資産の情報(取得日、耐用年数、未償却残高)が引き継がれないケースがあります。
- 対策: 以前の税理士から「固定資産台帳」のCSVデータ、またはPDFの控えを必ず受け取りましょう。クラウド会計側に一括インポートすることで、毎月の減価償却費を自動計上できるようになります。数が少ない場合は、固定資産台帳を見ながら手入力で転記でも問題ありません。
Step 3: 開始残高の整合性チェック
移行作業において、最もミスが発生しやすく、かつ最も重要な工程です。
- チェックポイント:
- 銀行口座の残高が、通帳の実際残高と1円単位で一致しているか。
- 借入金の元本残高が、返済予定表と一致しているか。
- 前受金や未払金といった経過勘定が正しく整理されているか。
開始残高がズレていると、その後の自動同期機能がすべて狂ってしまいます。この部分だけは、新しい顧問税理士に「初期設定支援」として徹底的にチェックしてもらうことを強くお勧めします。
Step 4: 仕訳データの移行
既存ソフトに入力済みの当期データを、新しいクラウド会計へ移す作業は「仕訳エクスポート・インポート」で行います。
多くのクラウド会計には、主要なインストール型ソフトからの「取り込み機能」が備わっています。しかし、そのままインポートして完了とはいきません。移行完了後は、正しく移行できているかどうかを勘定科目の合計残高をもとに確認する作業が必須です。
複合仕訳の処理: 給与支払いなど、一行に複数の科目が並ぶ「複合仕訳」は、インポート時に形式が崩れやすいポイントです。
税区分の不一致: 旧ソフトでの「課税売上10%」といった税区分が、新ソフト側で正しく認識されない場合があります。取り込み後に「消費税集計表」を確認し、合計額にズレがないか検証が必要です。
過去データ(過年度)はどこまで移行すべきか?
結論から言えば、「仕訳単位での移行は当期のみ。それ以前は旧ソフトからPDFやCSVなどで保存して管理」が一番よいと思います。クラウド会計ソフトでどうしても過去データを確認したい場合などは、データ移行する選択も十分あります。
| 移行対象 | 推奨される形式 | 理由 |
| 当期(進行期) | 全仕訳データ | 決算申告のために必須 |
| 前期(1年前) | 移行しない/全仕訳データ | 前年対比(推移表)を出すために有用ですが、どれだけ有用性が高いかで判断 |
| 前々期以前 | 移行しない | 2年以上前のデータを仕訳レベルで見返す頻度は多くないと思いますので、手間に比べたメリットが少ない |
まとめ
クラウド会計への移行は、単なるソフトの載せ替えではなく、経営の意思決定スピードを劇的に高める「攻めの投資」です。 面倒に感じがちなデータ移行も、勘定科目のマッピングと開始残高の整合性という要点さえ押さえれば、決して高いハードルではありません。 過去データは直近分に絞って効率的に移行し、銀行同期をフル活用した「リアルタイムな自計化」を最短距離で実現しましょう。
